インタビュー一覧 >  北灯ちとせ&うたや
青ビスたん:
それでは今度は、多紀さんについてお願いします。
北灯ちとせ:
多紀さんはこじれてますね。
あんまりこじれて見えないかもしれないけどこじれてる(笑)

あの、声優さんのキャラ設定が結構、浮き世離れしたというか。
なんか少し外してくる感じだったんですよ。
中華で何が好き? っていう質問に、臭豆腐って返ってくる(笑)
あ、なんか、ちょっと普通の人とは違う。
不思議ちゃんでもあり、何考えてるのか伝わりにくい人にしようと。
北灯ちとせ:
で、プランとしては、この人はいろんなものに抑圧を受けてて。
普通知ってることを知らない。
それで、特に性に対しては押さえこまれてきたと。
表には見えないけど中ではドロドロになってる。
こじらせ女子でいこう、という。

どうしようかなと思ってたんですけど、ライターの藤谷優さんに
そういうことをメールしたら、すっごい食いついてきてですね(笑)
青ビスたん:
藤谷優さんはどういう方なんですか?
北灯ちとせ:
エロゲは初めてだと聞いてましたけど、文章上手いなーと思ったからオファー出したんです。
そしたらもう、「多紀はこういう子でこういう子で!」って、
ものすごい妄想メールが毎回長文で届く(笑)
こりゃ面白いやって。

始めはエロシーンだけの予定だったんですけど、どんどんアイデア入れてもらって、
通常シーンも書いてもらいましたね。

だからあの、多紀の行動とか、いちいちこういうこと考えてて……みたいなのが
裏設定で一杯あるという。
青ビスたん:
ただの変な子じゃないんですね。
北灯ちとせ:
多紀には多紀なりのロジックがあって、それが表にでてこないから
結果的に分かんない子になってるみたいな。

で、韮井叶さんがまた面白く、細かく演じわけてくれましたね。
始めの打ち解けてない感じから、だんだん可愛くなっていく。
そういう演技をこちらからは何も言ってないのに用意してきてくれて。

あと、あのエンディングテーマ。

あれね、キャラクターシートに音痴って書いてあるから。
どうしましょう、って言ってわざわざ音痴に歌ってもらったんですよね。
でもあの、ちゃんとキャラとして、まじめに真剣なのに、音が外れてるっていう。
なかなか希有な感じでしたよ。
青ビスたん:
それでは、舞羽についてお聞きします。
北灯ちとせ:
舞羽はロリだしいいだろうと……思ってたんですけど。
あの、舞羽は本来、うたやさんがフィニッシュまで書いたバージョンがあったんですね。
それを僕が変えちゃったんで。これはもう、申し訳ない。

こう、なんであんなのにしたんですか、って。
多分言われちゃうと思うんですようたやさんに。
かわいくないじゃんって。
うたや:
コメントしづらいですね。
もしかして最初からお互いの心に住み着いていた舞羽が違うキャラだったのかなと(笑)
北灯ちとせ:
たぶんねー、舞羽像は違ったんですね。二人の中で。
青ビスたん:
どんな風に違ったんでしょうか。
北灯ちとせ:
うーんとですね。シナリオ途中まで榎津さんに見せた時なんですけど。

ここから確実にネタバレなんですけどね、望遠鏡の話。
主人公が舞羽の為になんかするって場面なんですけど、
あれ、「引きますね」って言ってたんですよ。

つまり、好意が重いと。
そこまでやってもらうと、それこっちも要求されてるような気がすると。
青ビスたん:
わーーー……。
北灯ちとせ:
話的にはあそこで、主人公の好意を受け入れて
素直になるっていう話だったんですよね。初期は。
でもそこが、根本的に変わっちゃうぞって。

でもゾクッとしちゃったんですよね。
意味わかんないままフラれる。なんて怖いんだ。
そういうことって現実には結構起きるじゃないですか。

じゃあそのままやっちゃおうと。なんだこりゃってなるだろうけど。

組み込んでみるとさんざんえっちしてていきなり急転直下なんで余計にびっくりなんですけど。
あれってのも、好意に応えたくて頑張ってたっていうことで。健気は健気で。

うたやさんはうたやさんで意図もあったわけだし、
それ破棄しちゃったのは、心苦しかったんですけど。
うたや:
そうだったんですか。
修正貰った当初は、根本的にエロゲに対するスタンスの違いが出たんだと思いました。
エロゲはキャラクタの可愛さやエロさを楽しみつつ、
お話を楽しむっていうのを重要視してるので。
多分エロゲじゃなく別の媒体で舞羽の話を書いたらまったく別の展開をすると思います。
それこそ恋愛しない可能性もある。
北灯ちとせ:
そうですよね
うたや:
だからどこまで可愛くしてイチャイチャするか? っていうのは難しいボーダーで、
その違いが多分シナリオに現れたのかと。
北灯ちとせ:
まあだから、やっぱエロゲ的にはうたやさんの方が正しいよな。
うたや:
以前自由にシナリオを書いた時に、キャラクタの受けがすごくよくなかった時があって。
北灯ちとせ:
あああ。
うたや:
すごくガッカリしたんですよ。
こちらではこういうキャラもいると思うし、こういうリアルさもあるだろうなと
思ってたんですが、でもユーザーさんもキャラの絵を見て楽しみにしてたのに
好みじゃなくてガッカリしたんだろうなと思うと。
そのままにしておけなかったんですよね。
北灯ちとせ:
うん。かわいいロリっこだと思ってたら違うって言われるとね。
うたや:
ただ腕があればきっとそれも問題なく解決出来ただろうから、
言い訳にはもちろんしたくないんですが。
北灯ちとせ:
いや、そっちにしたのは僕だからなあ。
うたや:
じゃあ自分の出来る範囲で、自分で納得出来る話で、可愛いと思って頂けるようなキャラを。
というのが自分の指針になってるところがあります。
北灯ちとせ:
それはすごく正しいですよ。
うたや:
多分もっと腕が上がれば、尖ったキャラでも
魅力的に書けるようになるのかなぁと…夢見てます。
だから、そこはまぁ、思い切りの違いもあると思いますよ。
北灯ちとせ:
そこはあの、僕はですね、尖りすぎちゃってもうエロゲじゃねえやっていうようなのを
作ってきたほうなんですね。瀬戸口君の作品とかとくにそうで。
うたや:
そうそう、多分そうなんですよ。
北灯ちとせ:
ルールとか気にせずに作ってる。
うたや:
難しいんですよね。個人的には元々そういうスタイルの作品が好きなんです。
まぁいつかほんとに根本から、エロゲっぽくないエロゲは作ってみたいですね。
北灯ちとせ:
あんまこう、そもそもそういうこと考えたことなかったんすよ。
うたや:
そこに大きな差がありますね(笑)
北灯ちとせ:
エロゲっぽいエロゲってなんだかわからんっつーか。
僕が好きだったころのエロゲってPC-98の頃なんで。
なんでもありだったんですよ。
うたや:
そうそう、時代差もあると思います。
北灯ちとせ:
ルール無用であること自体が好きだったので。
で、今いっぱい売れる時代ではないじゃないですか。
「萌えゲー作って一儲け」って感じでもないですしね。

ルール守ったから売れるってわけでもなくなってきた。
うたや:
クリエイター初心者はすげー鬱な話書きたがったりしますけど、
今は比率が変わって、初心者ほどモエモエして明るい可愛い話を書くようになって
それに慣れた結果が今なんじゃないですかね…
北灯ちとせ:
ああ、それはあるかもしれんですね。

今回お願いしたもう一人の伊舞新さんて若い方なんですけど、
エロゲ的な世界観っつーかそういうのに全く疑問持ってない感じしましたね。
ヒロイン全員主人公に惚れてて当然とか。
うたや:
そうですね、今はそういう作品が多いですからその感覚はわかります。
北灯ちとせ:
うたやさん的に、自分の資質はサブ向きだなあとか、メインをやりたいとかはあるんですか。
うたや:
本当にぶっちゃけるとメインで書きたいですね。
書いたらまたサブもやりたいって言い出すかもしれないですが。
北灯ちとせ:
ああ、もう好き勝手にやってみてえな! と。
うたや:
もう一度作品の全責任を負いたい、くらいの気持ちです。
北灯ちとせ:
それはやってみた方がいいかもしれんですね。
なかなかチャンスがない世の中ですけど。
うたや:
そうですね。機会があれば(笑)
北灯ちとせ:
今回はこう、声優さんにキャラ設定頼んだ時点で、手綱を離した面があって。
それこそ舞羽なんかはねえ、制御しないまま突き進んで。
いわば分からんまま解き放ったみたいな。ある意味これは、必然だったのかもしれないです。

まあほんと、再現性もないし。控えめに言えば、ちょっと変わったものが出来たかなという。
大きく言えば、唯一無二だぞとかそういうアピールになるのかもしれないですけど。

そんなわけで、対談どうもでした。
うたや:
はいーお疲れ様でした!
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