とりあえず良いところばかりを並べてしまった気もするが、難点もないわけではない。

 全体的に文章は練られていないところもあると感じた。状況を理解する前に台詞が先走ったり、もうちょっと描写が欲しい、というところがある。文章の刈り込みを優先するあまり、詰め込みすぎた部分もあったんじゃないだろうか。

 また、現実感が強いエピソードを中心にしていることもあって、ヒーロー部の活動が全体として弱いものになってしまっている印象も否めない。一言で言ってしまうと派手さに欠ける。
 ヒーロー部を作ろう、という主人公の動機づけも賛否分かれるところだろう。やや大げさで、少しひ弱な感じがあり、背伸びを続ける姿がイタい……そんな印象を受ける人もいそうだ。

 さらに個人的な話をして恐縮だが。
 このゲームのプロデューサーは、このレビューを書いている人間の学生時代の頃からの知り合いなのだ。このゲームをやりながら、その姿がありありと浮かんできてしまった。主人公を支える友人、篠崎にははっきりモデルがいる。
 彼は個性も強かったし、理屈っぽいところもあった。結局、彼はこのゲームでその当時のままの自分をこめて作ったんじゃないか、という気がした。
 そんな男ばっかでゲームしてアニメみてアホみたいな話をしてたあの頃の俺たちに、憧れをいっぱいに込めた女の子の友人を作ること。ヒーローをやらせよう、そういう楽しさをそのままゲームにこめよう。このゲームのテーマはそんなところにあるのではないか。
 極々私的な感想で恐縮だが、そう感じずにはいられなかった。




 このゲームの全体を通してたびたび引用されるのが「星の王子様」だ。これは童話ではあるが、むしろ大人にファンが多い。この童話のメインテーマの一つは、「いつまでも子供の心を忘れない」というもの。これはやはり大人になってからこそ理解出来るもので、だからこそたびたび引用されるのだと思う。
 このゲームをプレイする人間の多くは、それぞれの学生生活を経験しているだろう。あ、18歳以上がプレイ条件、ということだ。それなら学生まっさかり、という人はいない、わけだなうん。
 プレイヤーの中でも「完璧に満足した学生生活だった」という人はいないと思う。学生なんて所詮子供で、なにをする能力もないくせに、夢や憧ればかり膨らんでそれに追いつけないのだ。

 このゲームの主人公の問題はそうした未熟さそのものかもしれない。未熟な姿はおそらく多くのプレイヤーの自分自身と重ね合わせることができるだろう。それが学園ドラマ、本来の楽しみ方なんじゃなかろうか。

 こういうのはレビューとしては平等ではないのかもしれない。でも、学園ドラマっていうのはまず、その中にはまって体験すること、が大事なのかもしれない。そんなことも考える。このレビューは、ゲームが持っている「ハマりこむ」要素、それをきちんと説明しようと試みたつもりだ。
 アホなこともかっこいいことも、全部まとめていろんなことを経験しよう。その中で楽しい思い出を作れたら一番いい――
 このゲームはみんなが心に持っている「学園ドラマ」、そのひとつなのだ。

文責:kikiki

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